ステーブルコイン発行システムCalの説明

ステーブルコイン発行システムCalの説明

先日ブロックチェーン寄付講座の最終発表会がありました。

そこで「新しいステーブルコイン発行DeFi」の発表をしました。今回はこれについて説明しようと思います。

既存のMakerDAOの弱点

まずは既存のMakerDAOが抱える問題点についておさらいします。

こちらの記事に書かれているのですが、MakerDAOは借り手の損失がかなり大きいシステムです。
借り手は150%の担保を拠出し、金利を支払い、担保を維持できないと罰金を科します。これはステーブルコイン維持に必要な担保の保証をDaiの借り手に求めているからです。(担保型のステーブルコインでは発行額以上の担保を維持することが最重要になります)

つまり、Daiの借り手はステーブルコインを得る事で得られる価格リスクのヘッジを行うことができない上に金利など追加コストを支払う必要があるという事です。

しかし、これは大きな問題点である一方でCompoundなどの市場ではかなりDaiの需要があり、ETH建で分散的に発行されるステーブルコインの人気の高さが伺えます。

今回、説明する「Cal」はそういったMakerDAOの問題点を取り除きながら分散的にステーブルコインを発行します。

概要

このシステムの特徴はDaiが一人でやっていたステーブルコインの発行と担保の維持を切り分ける事でユーザーの負担を減らす事を目的としています。

Publisher

こいつの役割は至極単純で、ETHと手数料と交換でStablecoinを手に入れます。

そしていつでもETHと交換できます。

Risk Taker

イメージ的にはUniswapの流動性供給に近いです。

担保となるETHを供給します。彼らのメリットは二点です。

1. ETH価格が上昇するとPublisherの担保分の価格上昇分も受け取れる

価格が上昇すると、Stablecoin Makerの担保の必要額が余ります。このシステムではRisk Takerがそれを受け取ることができます。

例えばPublisherが10000円分のETHを預け、Risk Takerが10000円供給し、ETH価格が1.5倍になった場合、Publisherの担保の価格上昇分である5000円はRisk Takerにいきます。するとRisk Takerが所有するETHの現在価値は10000×1.5 + 5000で20000円分になります。

2. Publisherの手数料収入の一部が金利になる

これはそのままです。Uniswapの流動性供給と同じように手数料に一部がRisk Takerにいきます。

一方、リスクは次の二点です。

1. ETH価格が下落するとPublisherの担保分も負担しなければならない

先ほどの逆です。先ほどの例で言えば、ETH価格が半分になるとRiskTakerの担保の現在価値は10000/2 – (10000 – 10000/2)で0になってしまいます。

2.引出額に制限がある

システム全体の担保額がある一定を下回らないようにするため、Risk Takerの担保額がある一定水準以下の場合は引き出しができません。

また、こまめな取引を防ぐために最低の預け期間が用意されています。

だからと言って引き出すことができないわけではなく、Set Withdrawalという概念があり、市場で一定数のステーブルコインを調達して、そのステーブルコインとETHの交換とETHの引き出しを同時に行えばその分引き出すことができるという仕組みです。

ステーブルコインを調達したタイミングにより利得は変化しますが、引き出すことは可能です。

この仕組みのメリットデメリット

メリット

メリットはリスクをとってリターン(手数料収入)を手に入れる人とリスクを減らしてコストを支払う人でしっかり分かれている点です。きちんとここが分かれていることで金融システムとしてワークするようになります。

また、利害関係が明快でプライシングがしやすい点もMakerDAOと比べ、ガバナンスリスクを低減しているポイントです。

デメリット

ETH価格の大きな下落に無力です。この場合、Risk Takerの担保がそのまま没収されるようなことになりかねません。

また、Risk Takerに対してきちんとしたReturnを支払うことでシステム全体の流動性を担保してあげなければこのシステムが回らないことにも注意が必要です。

金利・手数料決定アルゴリズム

Stablecoin Makerが発行したステーブルコインの額とLiskTakerが預けたETHの額のバランスが適正に保たれるよう、ステーブルコイン発行の際の手数料の決まり方やLisk Takerに支払われる金利が決まります。

具体的にはステーブルコインの発行の比率が多すぎると手数料が大きくなります。また、Lisk Takerの担保が過熱しすぎると金利が下がります。

Version2の予定

運用日数が過ぎ、様々な価格帯でRisk Taker、Stablecoin Maker両者の預けETHが堆積するようになると安定感が出てきます。そうなった時にある程度限定的に、Risk TakerがETHの増減の倍率を自分で決められるようにします。これがV2です。この際、手数料がかかる、金利がつきにくいなどデメリットもありますが、

この仕組みの何がいいのか

ヘッジ価値の提供

ステーブルコインの発行者が担保の面倒まで見るとステーブルコインで得られるはずのヘッジ効果が得られません。それどころか金利や担保維持できない時の罰金を考えると価格変動リスクがかなり重くのしかかっています。

しかし、この仕組みでは一度発行すれば担保の面倒は見なくていいのでヘッジすることができるようになります。

負担の少ない仕組み

この仕組みでは制限がある程度あるとはいえ、Risk Takerにとっても金利がつく仕組みになっています。

これにより担保を維持する側が(ETH価格が上がると信じている場合は特に)メリットのある仕組みになっています。

その他

今一人でやっているので一緒にやってくれる人欲しいです。